第10章 ※◆with はち様(神田)
「…誰か、……ですか?」
「お前の身近な奴にでも渡せばいい」
言われている意味がよくわからないのか、きょとりと首を傾げる。
しかし身近な奴と言われ、誰か頭に浮かんだのか。
不意にウリエの口元は綻んだ。
「はいっ」
そこに迷いは見当たらない。
「あの」
「なんだ」
「貴方のお名前、教えてもらってもいいですか?私はウリエ・フェンベルグといいます」
最初に出会って交わした自己紹介を、また繰り返すかのように。
きちんと自分の名を名乗り尋ねるウリエを、神田は今一度静かに見上げた。
「神田ユウだ」