• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)






















「──あ」

「なぁに? この声…」


 優しい風に乗って微かに舞い込んできた、聞き覚えのある悲鳴。
 それを耳に、廊下でミランダと任務の話をしていた雪は、ついと顔を上げた。

 見上げた窓の先には、真っ青な晴天。
 心地良い天気にはそぐわない悲鳴は、よく知った彼の声。


(これは…あれだな)


 前に一度だけ見たことがある、ティエドールと神田の師弟関係の有り様。
 昔は神田の暴挙に失礼極まりないとティエドールを心配していたが、その光景を見てから雪の思いは変わった。
 どんなに神田が暴君っぷりを発揮して師にも手を上げようとも、所詮師は師、そして弟子は弟子。
 ティエドールが本気で怒りを見せれば、神田だって敵わないだろう。


(少しばかりずれたお仕置きだけど)


 なんともティエドールらしい、愛の溢れた鞭。
 それが逆に神田の背筋を凍らせていることを、ティエドールは確信しているのか否か。
 真実は闇の中。

 ただ一つ言えることは、


「なんだかんだ、元帥って凄い人だよね」

「…? なんの話? 雪ちゃん」


 色んな意味で、敵わない人なのだろう。


「ううん。平和だなぁって」

「そうねぇ…良いお天気よね」


 軽く首を横に振って、にこりと目の前のミランダに笑いかける。
 そんな雪に、ミランダもまたつられて頬を緩めた。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp