第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)
「ねぇ、雪ちゃん。折角こんなに良いお天気なんだし。サンドウィッチでも作ってお出かけしない?」
「サンドウィッチ?」
名案とばかりにぱっと笑顔を浮かべ、そんな提案を徐に差し出したのはミランダだった。
「ミランダさん、前もそれ作ろうとして失敗してなかったっけ…」
「だ、大丈夫よ! ジェリーさんに手伝ってもらえば…っ折角だし、マリさんや神田くんも誘って行きましょうよっねっ」
「………今はユウの所に行かない方が良さそうな気がする」
「あら、なんで?」
「…勘?」
「ふふ、面白い勘ね。それじゃあ先にお弁当作りに行きましょ♪」
「って、結局作るんだね」
「リベンジよ、リベンジ。努力すれば結果は報われるものっ」
「何その名言?」
「マリさんが昔くれた言葉なの。落ち込んだ時、私に元気をくれる源なのよ」
「へぇ…良い言葉だね」
「でしょう?」
軽い足取りで食堂に向かうミランダを、苦笑混じりに見つめた後、仕方ないと雪も後を追った。
その足取りはゆったりと穏やかなもの。
弁当作りで時間を稼げば、ティエドールの神田への愛の制裁も恐らく終わっているだろう。
そう踏んで。
「でもマリはともかく、ユウがついて来るかなぁ…」
「あら、来るわよ。雪ちゃんが誘えば」
「そ、そうかな…」
「ええ絶対。私が保証するわ」
「…ありがと、ミランダさん」
普段は自信のない弱気な姿勢のミランダだが、確信を持った笑顔で頷く姿に、雪にも照れが見え隠れする。
そんな雪の姿に、一層ミランダは頬を緩ませた。
その後。
ピクニックへと誘うミランダ達に、ティエドールの宝物が更にもう一枚追加されるのは、また別の話。
fin.
◆Tresor(トレゾール)/仏訳:宝物