第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)
「やっぱり!」
ティエドールの頷きに、嬉しそうに笑うチャオジーの目は真っ直ぐに白黒のラフ画──の、中心に向けられていた。
絵の真ん中に描かれているのは、見事な噴水。
煌びやかに水滴が舞い落ち揺れる水面が、木炭の柔らかさで見事に表現されている。
その水面の中。
白黒でしか表現されていない絵ではわかり難いものの、確かにそこに描かれていたもの。
それは水面に映る四人のエクソシストとファインダーの姿だった。
「これって先輩達っスよねっ?」
「うん。お見事」
ティエドールが今し方話してくれた姿なのだろう。
じっと目を凝らせて見れば、彼ら"らしい"姿できちんと描かれている。
寄り添っているのは神田と雪、そしてマリとミランダだ。
中睦まじい恋人姿、と言うよりは任務中に雑談しているだけの姿。
しかしチャオジーの顔はティエドール同様、目を輝かせて綻んでいた。
まだ日は浅いが、後輩として神田を慕い、マリとも何度も任務を組んできた。
近くで彼らを見てきたチャオジーだからこそわかったこと。
この水面に映し出されている彼らは、チャオジーのよく知っている普段の彼らではない。
「こんな姿してたんスねぇ…」
芽吹き実らせた、愛ある姿だ。