第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)
「そうならそうと言ってくれれば…というか返り討ちになんてするから状況悪化するんだよ」
「チッ…他にどうしろってんだよ。大体女と間違える方がどうかしてる」
「……」
「その沈黙はなんだ」
「いえ別に」
「あ! それなら良い案があるわっ」
「ミランダ?」
「ほら、前にリナリーちゃんとキューバでの任務で声を掛けられた時に、雪ちゃんと追い払ったじゃない?」
「キューバ…? あっ"実は見えてるんです撃退法"っ?」
「そう、それよっ」
「なんだそのネーミング…つかなんだ声を掛けられたって」
「ミランダ、任務先で軟派でもされたのか?」
「ええ。私は慌てちゃったんだけど、すぐに雪ちゃんとリナリーちゃんが息を合わせてくれて──」
「それは初耳だな。どんな男に声を掛けられたんだ」
「え? そ、それは…」
「おい雪。なんで黙ってやがった」
「いや…ただ声掛けられただけだし。任務に支障は…」
「任務の出来を聞いてんじゃねぇよ。誰だそいつどんな野郎だ」
「え、今更蒸し返す話っ? というか趣旨変わってるから! 話のメインは撃退法で…っ」
「んな話はどうでもいい」
「内容拒否!?」
「ミランダ、そういうことがあったならちゃんと言え。雪達がいたからよかったものの、ミランダ一人だったら…」
「ご、ごめんなさいマリさん」
「……おやおやおや」
「どうしたの? おじさん」
まじまじと彼らの姿を見て呟くティエドールに、不思議そうに少女が問いかけてくる。
「大体ちゃんと撃退できたんだから、そう拘る話でも」
「お前はよくても俺はよくねぇんだよ。変に体触られなかっただろうな」
「ないない、ないから。あれはリナリー目当てで…って顔近い近い!」
「はぁ…それで、どういう撃退法だったんだ? それは」
「あ、そ、それねっ霊が見えてるフリをして、ずっと誰もいない所に話しかけるのよ。雪ちゃんとリナリーちゃんの息が凄くぴったりで! 声を掛けてきた男の人達も、気味悪がってどこかに行っちゃって…っ」
「待てミランダ。男の人"達"?…複数だったのか」
「え、ええ…マ、マリさん?…顔が怖いわ…」
しかしティエドールの目は四人の姿に釘付けなまま。
不意にその口元を緩く綻ばせた。