第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)
「はぁ…やっと着いた…」
「すまなかったな、ミランダ、雪」
「ううん、なんてことないわ。マリさん達が無事見つかってよかった」
「そうだよ、マリは悪くないから。マリはね」
「んだよその言い草は」
「…別に」
「別にって顔してねぇだろ。言いたいことがあるなら言え」
「お、落ち着いて神田く…」
「貧弱女は黙ってろ!」
「ひぃいッ! ごめんなさいぃい!」
「だから貧弱言わないの!」
(おや)
元々世界遺産で賑わっている場所だが、ティエドールの耳は確かに聞き慣れた声を捉えた。
少女から視線を変えれば、宮殿広場に足を踏み込んでくる黒尽くめの服装の男女三人と、先導するように先を歩いている真っ白なマントの女性が一人。
どうやら待ち人達は、無事目的地に辿り着けたようだ。
「いっつもそうやってミランダさんにきつく当たって! 悪いことなんて何もしてないでしょ! 寧ろその場で待機って言ったのに動いたユウが悪い!」
「俺の所為じゃねぇよ! 変な男がやたらと体に触れてくるから返り討ちにしてやったら、暴行だなんだ喚きやがって…ッ」
「ま、まぁっそんな大変なことがあったのっ? ももももしかしてエクソシストを狙ったAKUMAだとか…!」
「いや、ただの軟派男だったんだ」
「…え?」
「…軟派?」
「神田を女性と間違えてたみたいで。セクハラ紛いな軟派をしてきた男だったんだ」
「「……」」
「おいマリ余計なこと言うなッ!」
(…おやおや)
こちらまで聞こえてくる騒がしい会話の内容に、ついくすりと笑みが漏れる。
どうやら目的地には辿り着けたが、色々と問題は起こっていたらしい。