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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



「なんだか二人して楽しそうだねぇ。デー」

「あーっ! 元帥、そろそろ行かないとお時間がッ」


 にこにこと嬉しそうに笑いながら、ティエドールがミランダ達に問いかけたのは数分前に雪達にかけた言葉と同じもの。
 ミランダの性格上、デートなのかなんて言われれば照れてパニックになるのは目に見えている。
 咄嗟に声を張り上げて言葉を遮ると、雪は慌ててティエドールとミランダの間に割り込んだ。


「時間かい? 時間ならたっぷりあるよ」

「で、でもほら…っ神田も! いい加減ティムに威嚇するのやめて!」


 遠慮がちに、それでもしっかりとティエドールの服の裾を掴み離そうとしない雪。
 しかしティエドールはにこにこと笑みを深めるばかり。
 捕獲したティムキャンピーに更にキツくその尾で縛り上げていた神田は、やっと雪達へと目を向けた。
 黒い瞳がしっかりとティエドールの裾を握っている雪の手を捉えて、眉を寄せる。


「時間も何も、なんでこいつと同行しなきゃなんねぇんだよ」

「こら! 元帥を"こいつ"呼ばわりしないッ!」

「まぁまぁ、そう怒らなくても。私は構わないよ、雪ちゃん。可愛い息子の反抗だ」

「だから息子じゃねぇっつってんだろ…!」


「…な…なんだか、色々あったみたい、ね…?」

「……はぁ」


 ズカズカと足早に歩み寄ったかと思えば、神田の手が雪の手首をティエドールの服から引き離す。
 それでもやはりティエドールの満面の笑みは、消えることがない。
 それが気に喰わないのか、感情を露わにして神田は噛み付いた。

 そんな突如現れた騒がしい三人の教団仲間の姿に、ミランダは苦笑いで首を傾げ、マリは深々と溜息をついた。

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