第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)
「急に出てくんな…っ痛ぇ!」
「ガァッ!」
「あ。」
「おやおや、なんだい。それマリアンのティムキャンピーじゃないか」
ポケットから転がり出た、己の尻尾で縛られた哀れな姿のティムキャンピー。
それを神田が捕まえようとすれば、必死に抵抗して鋭い歯を手に立てる。
「テメェ…!」
「ガァ! ガァアッ!」
「あっ! 神田待って…!」
そのままコロコロと器用に転がり逃げるものだから、後を追った神田が狭い建物の路地裏から飛び出した。
はっとした雪が慌てて追う。
容姿だけでも目立つ神田が、こうして騒いで姿なんて見せれば。
「誰が逃がすかよ…!」
「ガァアアッ!」
「あら?…あれって…」
「ん?……神田?」
「と、雪ちゃん…?」
「ってやっぱり…!」
(見つかっちゃった…!)
暴れるティムキャンピーを抑え付ける神田に、目を止めたのはミランダとマリ。
きょとんと不思議そうに見てくる二人に、雪はがくりと肩を落とした。
折角二人の為にと、隠れていたのに。
その努力は無駄と化してしまった。
「どうして二人がここに…」
「ち、ちょっとね…ちょっと…偶々通りすがっただけで…ほ、ほら行くよ神田っ」
「待て、こいつをいっぺん締める」
「ゴーレム虐待反対! アレンに怒られるから!」
不思議そうに問いかけてくるミランダに愛想笑いを向けながらも、慌てて神田の袖を引っ張る。
しかし神田の目は捕まえたティムにしか向いていない。
ぐいぐいと強めにコートを引っ張っていたら、ミランダの髪と同じココア色の瞳が見つけてしまった。
「まぁっ元帥さんもいらっしゃったんですかっ?」
「やぁ、ミランダ」
一番会わせてはいけない人物を。