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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



「そんなに恥ずかしがらなくてもいいんだよ。誰かを想い愛することは素敵なことなんだから。それで、初デートなのかな?」

「だ、だから違いますってば…!」

「その話聞かない癖をどうにかしろ!」


 ふわふわと喜びのあまり暴走するティエドールには、堪忍袋が切れかけている神田の声も届いていないらしい。
 そのまま緩んだ顔が、神田達から路地裏外のマリ達へも向けられる。


「それもユーくんだけじゃなくマーくんもデート日和だったなんてね。おーい、マーく」

「人を無視して好き放題すんじゃねぇッ!!」


 ゴィンッ!


「ぎゃー! 元帥になんてことを…! やり過ぎ神田!」


 ふわふわと喜び勇んでマリへと手を挙げるティエドール。
 余りにも短い神田の堪忍袋はそこで呆気なく切れたらしく、重い拳が容赦なくティエドールを襲った。
 鈍い音と共に、怒りで血管の浮いた神田の拳が遠慮なくティエドールの後頭部に落とされる。
 元帥という、同じ職場の人間としてもエクソシストとしても、そして年齢的にも敬わなければならない存在を殴りつけたことに、流石の雪も顔色悪く悲鳴を上げた。


「いたた…相変わらずユーくんの鉄拳は容赦がないね…」

「!?」


(相変わらず!? いつも喰らってるの!? いつも殴ってるの神田は元帥を!)


 殴られた後頭部を擦りながら、くるくると目を回すティエドールの姿に、雪はただただ驚きが隠せない。
 しかしティエドールは慣れているのか、慌ても怒りもせず殴られた勢いで飛んだ眼鏡を屈んで探している始末。

 これがあのクロス・マリアンとアレンのような、ブックマンとラビのような師弟関係であれば、確実に師の怒りの制裁を受けているはずだ。

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