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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第3章 ◆優先順位(神田)



「慣れろって言っただろ。ほら、無駄な力抜けって」

「うむ、む……なんか、遊んでない…っ?」

「半分な」


 両手で顔を挟み込めば、頬を押された月城の顔がマヌケ面に変わる。
 そんな顔に思わず吹き出しそうになって、堪え混じりに呼びかけた。
 どこか恨めしそうに目を開けた月城が、ぽかんとした表情に変わる。
 力んでいた力が抜けて、マヌケに緩んだ顔。

 その隙を見逃さなかった。


「──ん、」


 重ねた唇にくぐもった小さな吐息を耳にして、前はそこで止めていた動きを今日は止めなかった。


「っ…? ぁッ…ん、んッ」


 唇を塞いだまま舌先で軽くつつけば、驚いた月城の口が動く。
 その隙間に舌を滑り込ませれば、ぴくりと小さな肩が跳ねた。

 下がる頭。
 逃げるように距離を取ろうとする顔を追いかける。


「んぅ…ッ」


 後ろの窓ガラスに頭部を当てて下がれないことをいいことに、そのまま深く口付けた。


「ん、ふ…っ…ッ」


 隙間もないくらいに重ねた唇。
 狭い咥内を、ゆっくりと舌で探る。

 すぐ逃げようとする月城だから、なるべく驚かさないように慎重にしてるつもりだったが。


「ッ!」


 舌先で同じく月城の舌に触れれば、逃げるように奥に引っ込んだ。

 …オイ。
 だから逃げんなって言ってんだろ。

 顔を両手で固定したまま、その舌を追いかける。
 優しくするつもりだったのに、気付けば後先考えずに舌を絡めていた。


「ふ、ッ…は…ッ」


 一瞬離れた唇は、一呼吸だけ息を吸う。
 呼吸を整える暇も与えず、また深く口を塞ぐ。

 そう繰り返していると、鼻に抜けるような吐息の合間にその手が力なく俺の服を掴んだ。
 凭れるような体を支えるように抱きしめれば、ぴくりとその体は僅かな反応を見せた。


「んン…ッ」


 カーテンを締めきった少し薄暗い部屋に響くのは、お互いの舌が重なって生まれる音と月城のくぐもった息遣い。
 それはじりじりと俺の胸の奥を焦げ付かせて、確かな"欲"を感じさせた。

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