• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



「ストップ! ちゃんと科学班に持って行って映像消してもらうから…!」

「誰に消してもらうつもりなんだよ。リーバーか? ジジかジョニーか。全員野郎だろうが。…とりあえず中身潰しておけば消えるか」

「わーッ! 待って待って! キャッシュ! そうだキャッシュがいるから!」

「は? 誰だよそいつ」

「えっ知らないの? 新本部移動の時に他支部からやって来た女性研究員だよ。タップの妹の!」

「……………知らねぇ」

「……相変わらず他人に興味ないんだね…」


 ぐいぐいと雪が抱き付いた腕を引っ張れば、知らない名を耳にやっと神田の足は止まった。

 キャッシュ・ドップは、その姓の通り、科学班であり旧本部がAKUMA襲撃を受けた際に命を落としたタップ・ドップの妹。
 ふくよかな体や分厚い唇はタップそっくりで、出会った瞬間にジョニーがタップと間違えて涙ながらに抱き付いたことは有名な話である。

 しかし神田はそんな新しい科学班の顔、それも珍しい女性研究員のことを全く知り得ていなかったらしい。

 他人に滅多に興味を示さない、名前だってまともに呼ばない。
 そんな神田らしいと、雪は感心すらした。


「とにかく、キャッシュなら映像見せても問題ないし。ちゃんと消してもらうよ。だからティムに変なことするのはやめて」

「別に変なことするつもりなんかねぇよ」

「するでしょ。絶対。その目AKUMAを斬る時のそれと一緒だから」

「……」


 何度も間近で神田の戦闘を見てきたからわかる。
 きっぱり断言した雪が首を横に振れば、神田は忽ち口を閉じた。

 確かに映像を消す為に、一度中身でも割ってみるかとは考えていた。
 だからこそ否定できない。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp