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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



「待っ…ちょっひゃ、ほんっと…!」

「…オイ」


 もこもこと、雪の体を這うように謎の塊がカットソーの中を移動していく。
 それが擽ったいのか、身を捩りつつ耐える雪。
 やがてその塊が腹から胸へと上がり、もぞもぞとカットソーを膨らませていた移動を消す。
 一体どこへ消えたのかと神田が思わず雪の胸を凝視しそうになって、目を逸らした時。


「あっ!」


 ぴょこんっと。
 声を上げる雪の首に巻かれたストールの中から、それは唐突に姿を現した。

 金色の光沢ある丸いボディ。
 ふわふわの綿飴のような先をした細長い尾。
 そして同じにふわふわの細長い二つの羽根。

 それはいつも白髪の少年の傍を飛び回っているゴーレム。


「ティムっ?」


 ティムキャンピー、それである。

 驚いてその名を呼ぶ雪に、もぞもぞとストールから這い出して丸いボディを頬に押し付けてくる。
 そんな唐突なゴーレムの出現に、何故か雪は顔を綻ばせた。


「どこに行ってたかと思ったら…! いつの間に服の中なんかに紛れてたの」

「ガァッ♪」

「あははっ、擽ったいから次から潜り込むのは止してね」


 スリスリと頬擦りしてくるティムキャンピーに笑って返す雪。
 そんなじゃれ合う一匹と一人の光景は、見ているとつい頬が緩むようなもの。

 しかし神田は違った。


(オイ待て。今そいつどこから出てきやがった)


 見間違いでなければ、雪の服の中を通って首に巻き付けたストールから出てきたはず。
 というか間違いなく服の中を這っていた。

 見間違いでもなんでもない、堂々たるセクハラだ。
 ゴーレムに性別があるのかは、謎だが。


「……」


 みしり、と神田の眉間の皺が深く刻まれた。

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