第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)
書庫室を後にしたティエドールの手には、目的だったはずの本は一冊も握られていない。
しかしその足取りは軽く、くすりと口元には笑みが浮かぶ。
「いやぁ、思い掛けない発見をしたもんだ」
興味の惹く一冊でも見つかればいい、と思って探しに向かえば、予想以上に素敵なものを見つけてしまった。
ドジ属性のミランダがマリに世話を掛けるばかりかと思えば、そうではない。
彼女にもしかと人を見る目があって、それはマリの些細な変化をきちんと捉えていた。
お互いに凸凹な所があって、きっとそれは寄り添えばぴたりと嵌るものだろう。
なんて素敵な発見なのか。
「今日は良い日だ」
素敵で胸が高鳴る嬉しさ。
それが、ふたつ。