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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



「そ…そう、よね…大事なのは本より命よね…ごめんなさい私ったら…ッマリさんに余計な心配をかけただけじゃなく手まで煩わせてしまってもう本当なんて言ったらいいか言葉も出ないわこれだから私はいつもいつ」

「ミ、ミランダ落ち着け。悪かった、言い過ぎたから。落ち着け」


 悶々悶々。
 ドス黒い負のオーラを頭上に漂わせながら、目に見えて大きく凹むミランダ。
 カタカタと体を震わせ涙を称え、その口からは途切れることなく負の言葉が羅列して漏れ出す。
 慌ててマリが訂正するものの、その言葉は極度に落ち込んだミランダには届いていないらしい。


「ああなんで私はいつもこうなのかしら! 本当に周りが見えてなくて折角のマリさんの好意も台無しにしてしまって…! これはもうエクソシストを辞めて責任を取るしかッ!!!」

「ミランダミランダ! そこまでいかなくていいから! 落ち着け!」

「……凄いネガティブ思考だねぇ」


 ある意味惚れ惚れする程に。
 ミランダの素を垣間見たティエドールが、思わず息をつく程に。

 後ろ向きな性格であるとは聞いていたが、これはもう後ろ向き所ではない。
 真後ろに向かって全力疾走しているようなものだ。


「大丈夫だからッ!」


 その怒涛の負のオーラを止めたのは、マリの一層響く声だった。
 今日は書庫室に偶々自分達しかいなくてよかったと、つくづくティエドールはほっとした。


「大丈夫、ミランダは何も悪くない。私がつい感情的になってしまっただけなんだ。…すまない」


 マリの声にピタリと止まるミランダの勢い。
 しかしその大きな瞳には、大粒の涙が称えられたまま。
 その顔を見下ろし眉を下げるマリは、先程の勢いが嘘であるかのように萎んでいた。


「手助けに来て、逆に泣かせてしまうなんて…男として失格だな」


 ふ、と自嘲気味にマリが自分を詰る。
 ゆっくりと抱きとめていたミランダをその場に下ろせば、はっとした細い手がマリの服を掴んだ。


「そ…っそんなことないわッ」


 アレンと同じように両手には真っ白な布手袋。
 しかしアレンとは違い女性独特の細い線を持つミランダの手。
 それは小刻みに震えながらも、しっかりとマリの服の裾を握り込んでいた。

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