第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)
「フロワ・ティエドールって…もしかして元帥さんッ?」
「うん。一応そうなるね」
「ま、まぁ…! 私ったら見っとも無い姿をお見せして…! ごごごごめんなさい…!」
ティエドールが笑顔で頷けば、忽ちミランダの顔が真っ青なものに変わる。
元々肌の色は不健康な青白いものだから、今にも倒れてしまいそうにも見えてしまう。
「いやいや、構うことないよ。大丈夫、気にしないさ」
「でででも…ッ」
「それより本を片しているんだろう? 私も手伝わせて貰ってもいいかい」
「えっ! 元帥さんが!? そ、そんな悪いです…!」
「いいんだよ、私も今日は一日暇だし。軽い運動代わりにね」
それを止める意味でも笑顔を返しながら、袖を捲ってみせる。
しかし逆効果だったようで、ミランダは一層顔を青くしてぶんぶんと首を横に振り続けた。
それでも押しには弱いのか、ティエドールが構わず隅に積み上げられた本の固まりへ向かえば、オロオロしながらも口篭ってしまう。
そんなミランダを良いことに、さぁ片付けに取り掛かろうとすれば。
「待って下さい」
大きな手が肩に触れて、止められた。
「お気持ちはあり難いですが…これはミランダの仕事です」
振り返れば、穏やかな声で止めてくる。
それはいつもと変わらぬマリの姿だった。