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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



「なら彼女の耳から手を離してあげなさい。痛がっているだろう?」

「……チッ」


 もう一度、今度はしかとティエドールが注意すれば、神田の手はやっと渋々その耳から離れた。


「ぃたた…」

「大丈夫かい? えっと…」

「…ぁ……はい。月城雪といいます。お噂はかねがね伺っております…初めまして。フロワ・ティエドール元帥様」


 少女の前で身を屈めて目線を合わせれば、丁寧な言葉と共に頭を下げられる。

 幼い姿には見合わぬ大人顔負けな態度。
 神田と共に組まされ、この幼さで戦場に出ているのだ。
 外見に合わぬ性格なのは、当たり前なのかもしれない。


「"様"なんていらないよ」

「…ティエドール元帥」

「うん。じゃあ君は雪ちゃんだね。任務はイノセンス回収かい?」

「はい。アメリカのネバダに…」

「ああ、成程ねぇ。あそこは周りが砂漠地帯だからね」


 だから水がどうこう、神田に助言していたのだろう。


「でもあそこには子供には不釣り合いな所でもあるから、気を付けて行っておいで」

「不釣り合い?」


 きょとんと不思議そうに見てくる少女の顔は、あどけなく年相応にも見える。
 こうして見れば可愛らしい少女だとティエドールは思った。
 自分の部隊に所属するエクソシストであれば、さぞかし可愛がっただろう。


「大人がお金で夢見る所だからね」


 有名なラスベガスがあるのもそこネバダだが、この子は知っているのか。
 本来なら、カジノなんて興味を持たない年頃だろうが。

 確かこの少女は、ファインダー部隊に入るまではクロス・マリアンの元に身を置いていたと聞いた。
 温和なティエドールだが、金遣いや女遊びの激しいクロスにはあまり良い感情を抱いていなかった。
 その一番の理由が、弟子であるエクソシスト達への雑な態度にあるのだが。
 そんな彼の手元で育ったのなら、この少女ももしかすると金使いの荒い、癖の強い性格かもしれない。

 そんな一抹の不安がティエドールの頭を過ぎった。

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