• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第3章 ◆優先順位(神田)



「神田って、狭そうに見えて実は凄く広い心の持ち主だったんだね」


 修練場を出て廊下を歩いていると、隣をついて歩く月城が弾んだ声でそんなことを伝えてきた。
 見れば満面の笑み。

 何がそんなに嬉しいのか、意味はわからなかったが…


「…それは褒めてんのか貶してんのかどっちだ」


 その言葉の真意もよくわかんねぇ。
 褒めるか貶すか、わかり易く言え。


「紛うことなき褒め言葉です」


 問えば速攻で親指を立てて応えるドヤ顔の月城に、それ以上何か突っ込む気にはなれなくて口を閉じた。

 なんか…面倒臭い。

 するとその雰囲気でも伝わったのか、月城はどこか心外そうな目で訴えてきた。
 訴えてきたが、無視してやった。

 色々と面倒なんだよ。
 突っ込んだら話が長くなりそうな気がする。


「あ、そうだ」

「?」

「神田、この後時間ある?」


 そんな俺の態度に諦めたのか。
 はっと何か思い付いたかのように、唐突に月城が話題を変えた。


「時間?」

「うん」


 何かあんのか。

 そう問いかけても、月城はにこにこと笑うばかりで真意は伝えようとしなかった。
 …やっぱり面倒臭い奴だな。

 まぁ、嫌だと思えば付き合わないから。
 こうして譲歩してる分、面倒だが俺には嫌なことではないらしい。









/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp