• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



「それで、どうしたのかな? そんなに息を切らして」

「あっは、はいっス! あの…もしよろしければ、俺に稽古を付けてくれませんか…っ?」

「稽古?」

「はいっ! 早く神田先輩のように強いエクソシストになりたくて…! ぜひ師匠に稽古の相手をして欲しいなって…!」


 問えば、キラキラと目を輝かせてチャオジーが口にするのは、まさに今し方思い浮かべていた眉間に皺寄せ嫌悪感を向けてくる、可愛い息子(弟子)の一人。神田ユウ。

 どうやらチャオジーは同じ部隊に所属している神田のことを、心底尊敬しているらしい。

 その気持ちはわからなくもない、とティエドールは内心頷いた。
 神田のエクソシストとしての腕前は、教団内でも随一と謳われる程のもの。
 ティエドール部隊の中では迷いなく一番と言えるだろう。
 そんな彼に、新人エクソシストであるチャオジーが憧れるのも訳はない。

 けれど。


「その熱烈なお誘いも嬉しいけど、私はチャオくんとお茶がしたいかなぁ」

「お茶…っスか?」

「うん。君はまだティエドール部隊に入ったばかりだろう? ほら、折角の休日だし。私にチャオくんのことを色々聞かせてほしいんだ」


 仲間と密な関係を取り合うことも、エクソシストとして大切なことだよ。と笑って誘えば、この至極真面目な弟子は真剣な表情で考え込んだ。


「そう…っスよね。はい、わかりました! ぜひともそのお茶、ご一緒させて下さい!」

「うんうん。じゃあここに座りなさい」

「はいっス!」


 隣の椅子を引いて促せば、失礼しますと丁寧に頭を下げて腰掛けてくる。
 そんな可愛い弟子のため、テーブルに置いていたティーポットにティエドールは手を伸ばした。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp