第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)
「それで、どうしたのかな? そんなに息を切らして」
「あっは、はいっス! あの…もしよろしければ、俺に稽古を付けてくれませんか…っ?」
「稽古?」
「はいっ! 早く神田先輩のように強いエクソシストになりたくて…! ぜひ師匠に稽古の相手をして欲しいなって…!」
問えば、キラキラと目を輝かせてチャオジーが口にするのは、まさに今し方思い浮かべていた眉間に皺寄せ嫌悪感を向けてくる、可愛い息子(弟子)の一人。神田ユウ。
どうやらチャオジーは同じ部隊に所属している神田のことを、心底尊敬しているらしい。
その気持ちはわからなくもない、とティエドールは内心頷いた。
神田のエクソシストとしての腕前は、教団内でも随一と謳われる程のもの。
ティエドール部隊の中では迷いなく一番と言えるだろう。
そんな彼に、新人エクソシストであるチャオジーが憧れるのも訳はない。
けれど。
「その熱烈なお誘いも嬉しいけど、私はチャオくんとお茶がしたいかなぁ」
「お茶…っスか?」
「うん。君はまだティエドール部隊に入ったばかりだろう? ほら、折角の休日だし。私にチャオくんのことを色々聞かせてほしいんだ」
仲間と密な関係を取り合うことも、エクソシストとして大切なことだよ。と笑って誘えば、この至極真面目な弟子は真剣な表情で考え込んだ。
「そう…っスよね。はい、わかりました! ぜひともそのお茶、ご一緒させて下さい!」
「うんうん。じゃあここに座りなさい」
「はいっス!」
隣の椅子を引いて促せば、失礼しますと丁寧に頭を下げて腰掛けてくる。
そんな可愛い弟子のため、テーブルに置いていたティーポットにティエドールは手を伸ばした。