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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第8章 ◆Tresor(神田/マリ×ミランダ)



「師匠っティエドール師匠っ!」

「うん? やぁ、チャオくん。良い天気だねぇ」

「そうっスね…じゃなくて! 師匠、今お暇ですか?」

「うん、気持ちの良いお昼だからね。丁度お茶をしていた所なんだよ。チャオくんもどうだい?」

「あ、じゃあ一杯…でもなくて! あの、師匠」

「うんうん、そうだ。教団(ホーム)では私のことは"パパ"でいいんだよ、チャオくん。師匠なんて堅苦しい呼び方しなくてさ」

「ええっ! そ、そんな…無理っスよ。元帥ともあろう方を…ぱ、パパ呼び、なんて…」


 お昼時。
 場所は新しくイギリスのある森の中に建てられた、教団本部の中庭。
 温かい木漏れ日の差す木陰の中で、置かれている真っ白なテーブルを前に同じく真っ白な装飾ある椅子に寛ぎ腰掛けているのは、フロワ・ティエドール。
 エクソシスト元帥のうちの一人であり、目の前でおどおどと言葉を濁しているチャオジー・ハンの師となる人物である。

 そばかすのある頬を少しばかり赤くして、照れ臭そうに断ってくる。
 そんなチャオジーの初々しさも見える反応に、ティエドールは眼鏡の奥の垂れた目を細めて微笑んだ。

 ティエドール部隊に所属しているエクソシストは、今現在は三名。
 パパと呼べと誘えば、約一名は苦笑混じりに首を横に振り、約一名は眉間にくっきりと皺寄せて嫌悪感を向けてくる。
 こんなふうに初々しい反応をする者などいない。

 だからこそ、この新人エクソシストであり最近自分の部隊に入ってきたチャオジーが、ティエドールは可愛くて仕方がなかった。

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