第7章 ◇サンタクロースと4人の子(ティーンズ組)
「………行きました?」
「うん。行ったみたい」
「はー…あっぶね。焦ったさー」
「全く。発言には気をつけて下さいよ神田」
「は? んだよいきなり」
パタパタと小走りに食堂の入口前を通り過ぎていく白衣姿。
それを視界の隅で確認した後、やれやれとアレンは溜息をついた。
同様にほっと溜息を溢すリナリーとラビに、一人意味が理解できずに神田は眉間に皺を作る。
いきなり彼らは何を言い出しているのか。
「サンタのことですよ。今後その発言はタブーでお願いします」
「黙ってないと怒るからね、神田」
「こればっかりは空気読んで欲しいさ」
「何意味わかんねぇことを…って、」
そこまで口にして、はたと神田は彼らの言葉を理解した。
一昨日、安眠を妨害してきた謎の赤い服の侵入者。
それがサンタでないことも、またその正体も神田は気付いていた。
気配を敏感に探れるエクソシストである神田ならば、素人である一般人の彼女の気配を察知することなど容易い。
となると、エクソシストである彼らもまた同じだったのではないか、と。
「お前らまさか…」
「サンタさんの正体でしょ? 知ってたわよ」
「夜中に傍で声なんて出されれば、すぐにわかります」
「本人は上手く化けてるつもりだったみたいだったけどさー…すげぇ可愛かったアレ」
神田の予想通り。
問いかければ、あっさりとリナリー達は首を縦に振った。
となると彼らはサンタの正体をわかっていて、敢えて神田に話題を振っていたのか。
そんなことをする理由があるとすれば、一つだけ。
「口髭とか付けてましたよね。真っ赤な帽子を目深に被って。なんだか仮装みたいで可愛かったです」
「ふふ。靴下を見て御礼言ってきたのよ、南さん。あれ可愛かったなぁ」
「さっきもスゲー嬉しそうにしてたし。バレずに成功したって喜んでんだろうなー……ほんと可愛過ぎ」
サンタに成り切った、南の為だ。
南が去っていった食堂の入口を見ながら、各々呟くアレン達。
ほのぼのと笑顔を浮かべて南を思う彼らの姿は、まるで子を見守る親のよう。
これではどちらが大人で子供なのかわからない。