第7章 ◇サンタクロースと4人の子(ティーンズ組)
「休める時は休め。これ上司命令な」
「…気を付けます」
「…本当か? 次休日に仕事してるの見つけたらペナルティ付けるぞ」
「ええっ!? し、仕事してるのにですかっ?」
「それは"仕事"とは言わない」
「ぁたっ」
ジト目で一頻り南を見た後、ぺしりとリーバーの手が小さな額を軽く叩く。
「わかったな」
「う…わかりました」
これくらい言わないと休みそうもないと、内心南への不安を抱えながらリーバーは溜息をついた。
「あの…それで班長。この書類は?」
「ああ。イブに休みたいと騒いだ室長がサボった分の仕事のツケ」
「………去年もそんなことありませんでしたっけ」
「毎年の恒例行事だな、もう」
我らが科学班としては、クリスマスはケーキやプレゼントではなくコムイがサボり出す仕事が行事のようなものだ。
深く溜息をつくリーバーの腕の中には、大量の書類。
同じく分厚い書類の束を抱えたまま、南も肩を落とさずにはいられなかった。
(サンタ…私の所にも来てほしいなぁ…)
休日という名のプレゼントを抱えてやって来てくれたら、どんなに嬉しいことか。
しかし悲しいかな、南はもう成人した身。
クリスマスではプレゼントを貰う側ではなく、与える側だ。
「とにかく運び終えたら、部署ごとに分けてから処理な。今日は忙しくなるぞ」
「わかりました」
足早に進むリーバーに、一度だけ南は食堂内でクリスマスのフルコースを吟味するアレン達へと振り返った。
楽しそうに料理に手を伸ばす休日の彼らの姿は、羨ましくも見えるが同時に嬉しくもなる。
ああして無邪気にクリスマスを楽しんでいるのが、彼らの年頃では当たり前のことなのだから。
「何ボサッとしてんだ南。ついて来い」
「あ、はいっ今行きます!」
リーバーの呼び声に、はっとして慌てて視界から彼らの姿を外す。
今度は一度も振り返らずに、南は足早に食堂を通り過ぎた。
クリスマスであっても、科学班は行事など関係のない職場。
今日は残業になりそうだと、零れ落ちそうになる溜息を咄嗟に飲み込んだ。