第7章 ◇サンタクロースと4人の子(ティーンズ組)
「そういや二人はプレゼント、何貰ったんさ? 欲しいもん貰えた?」
後頭部に両手を組み重ねながら、ふとそんなことを問いかけたのはラビだった。
果たしてサンタは自分以外の者には、何をあげたのか。
探究心の強いラビには、純粋に気になるところ。
「ええ、はい。少し望んだ物とは異なりますが…僕はお洒落なテーブルかけとお菓子の詰め合わせを貰いました。あと…メッセージみたいなもの、かな」
「みたいなものってなんさ?」
「テーブルかけに、"空腹こそが一番の御馳走だ"って刺繍されてたんです。……少し反省しました。常に空腹が満たされるようなものを望むなんて、甘んじてたなって」
「へえ…って常に空腹が満たされるようなものって、何をお願いしたの? アレン君」
「あはは…秘密、です」
興味深そうに尋ねてくるリナリーに、空笑いを返すアレンは少しばかり恥ずかしいのか、首を横に振ってみせた。
手に入れば常に空腹から解放される最高の某猫型ロボットの秘密道具。
しかしサンタクロースの腕を持ってしてもそんな道具は作り出せなかったのか、丁寧に刺繍されたテーブルかけがプレゼントの包みの中には入っていた。
それでも所々歪に曲がっていた刺繍文字は、明らかに手作りしたとわかるもの。
自分の為に縫ってくれたものだと思うと、望んだものとは異なっていてもそこまで落ち込みはしなかった。
「それよりラビは? 何貰ったんですか」
しかしそんな秘密道具を願ったと二人に言うのは、子供っぽくて恥ずかしい。
一頻り愛想笑いを浮かべた後、アレンは自身から逸らすように問いの矛先をラビへと向けた。
「オレ? オレはアメリカ独立宣言書」
「独立宣言書?」
「それって、あの公文書館に飾ってある?…あんなもの貰えるの?」
「の、レプリカさな」
「「レプリカ?」」
朝起きれば、ラビの枕元に置いてあったのは長い筒状の箱だった。
絶対に手に入らないものだと思っていたから、もしやと嬉々として蓋を開ければ、中から出てきたのは原寸大の独立宣言書のレプリカ。
なんだとガッカリはしたものの、それでもきちんと詳細まで再現されたものに不思議と心は満ちた。
本物は手に入らなかったが、サンタは願いを聞いてくれようとしていたらしい。
そのことが、なんとなく嬉しかったから。