• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第3章 ◆優先順位(神田)



「…そういう顔は、場所を考えてやれ」


 俺の前で見せんのはいいが、他人に見られるのはいけ好かない。

 ぼそりと告げれば、月城は意味がわからないとばかりの顔で俺を見た。
 答える代わりに視線をもう一度リナ達に向ければ、追うように月城の顔も後方に向く。


「雪と神田じゃない」

「…あ」


 そこでやっとリナ達の存在に気付いたらしい。


「また一緒に組み手やってたの? やっぱり仲良しね」

「…というかまた雪さんの顔抓ってませんでした?今」


 ジト目で見てくるモヤシのその視線と言葉を、目を向けることもなく無視してやる。
 お前が来るから抓る羽目になったんだろ。


「折角だし、私達も組み手混ぜてよ」

「…気分じゃない」

「え?」


 本当にそんな気分じゃなかったから、迷わず告げて腰を上げた。
 驚き見てきたのは、誘ってきたリナじゃなく月城だった。

 なんだよ。


「充分汗は掻いた。シャワー浴びる」

「充分って…」


 何か言いたげに見上げてくる月城の意図はわかる。
 いつもならこんな短時間で鍛錬を切り上げたりしない。
 だが気分じゃないのは本当だった。

 またいつふとした瞬間に、月城がさっきみたいな顔を見せるかわからない。
 それをリナならまだしも、モヤシに見られんのは心底嫌だった。


「行くぞ」

「え?…あ、うん」


 リナとの鍛錬は乗り気じゃないし、それなら無駄に此処にいる意味もない。

 リナ達に背を向けたまま月城を呼ぶ。
 さっさとこいつを連れて、此処から出るか。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp