第7章 ◇サンタクロースと4人の子(ティーンズ組)
Case2:ラビ
「…相変わらず汚いなぁ」
「足の踏み場が見つからないである…」
「気をつけてね、クロウリー。書類崩したら起きちゃうかも」
続いてやって来たのは、唯一二人一組で部屋を当てがわれているラビの所。
ブックマンとの二段ベッドの下を見れば、見慣れた赤毛が布団の隙間から覗いているのが確認できた。
私も夜目が利いてきたかも…。
一度来たことがある部屋だから、その汚さは知ってる。
あちこち無造作に積まれた書類や新聞紙や文献の数々。
一見散らかってるようにも見えるけど、でもこれはちゃんと整頓されてるらしい。
記憶力の良いラビだから、物を動かしてしまえば恐らく起きた時に誰かが来たとバレる。
そんなヘマはしないようにしないと…。
「靴下、あった?」
「である」
「ほんとっ?」
なんとかベッドの傍まで辿り着いて、ラビの枕元を確認すれば…本当だ。
お洒落な縞々模様の靴下が一足。
ラビもアレン同様、私の言うこと聞いてサンタを信じてくれたんだ…あ、駄目だじんとくる。
アレン同様感極まってしまって、じっとラビの寝顔を見……見えないな。
すっぽり顔まで布団を被ってるから、肝心の寝顔は見えない。
辛うじてオレンジ色の特徴的な髪が見えるだけで。
「……」
「南? どうしたであるか」
「や……そういえば寝てる時のラビって、眼帯外してるのかなって」
「眼帯…であるか?」
「うん」
いつも四六時中眼帯を身に付けてるけど、ピアスやヘアバンドやマフラーや、装飾品多いラビだから。
あの真っ黒な眼帯も、飾りの一つみたいに見えていた。
多分飾りじゃないんだろうけど…だから気になる。
寝てる時くらいはもしかして外してるのかな。
ほら、ずっと身に付けてたら蒸れたりしそうだし。
……外したらどんな顔をしてるんだろう。
「ち…ちょっとだけ」
「! そんなことしたら起きるであるよ…っ」
「しーっクロウリー静かに」
「っ…」
なんとなく興味が湧いて恐る恐る布団に手を伸ばす。
慌てるクロウリーを制してゆっくりと布団を下げれば、見知った顔が──
「…いつも通りだ」
「…であるな」
物凄く見知った、いつも通りの顔が出てきた。
しっかり右目に眼帯を付けたままの。