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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第6章 Merry christmasの前にⅠ【アレン】



「ガァッガァアッ!」


 すぐ傍にある椛の顔。
 そこに自分の顔を寄せようとすれば、そんな僕の行為を遮ったのはティムの雄叫びだった。
 "見ろ"って何かを示してる時の声だ。
 なんだよ、こんな時に。
 いくらティムでも邪魔しないで欲しいんだけど。


「はぁ…どうした? ティム」

「…何あれ」


 二人で再び窓の外に目を向ければ、案の定ぴょんぴょんと先程より大きく飛び跳ねるティムが外にいた。
 でも僕達の目はティムじゃなく、その周りの景色に目が止まってしまった。

 舞い散る粉雪に、朝日が照らされて反射してる。
 きらきら、きらきら。
 辺り一面を一層銀色の世界に光り変えている。

 …あれ、


「ダイヤモンドダスト」

「え? ダイヤモンドダスト?…ってあの!? あれがっ?」

「あっ」


 昔、マナと一度だけ見たことがある。
 寒さ厳しい冬の朝に、偶に見ることのできる現象。
 思わず呟けば、驚いた椛が一目散にベッドを下りて窓際へと駆けた。

 僕の腕の中から、飛び出して。


「わぁ…! 凄い凄い! アレンくんもおいでよっ近くで見るともっと綺麗だよ!」

「…はあ」


 少しガッカリしたけど、楽しそうにはしゃぐ椛を見ればつい笑みが漏れてしまう。
 まぁ、こんなにはしゃぐ椛が見られたんだし。
 いいかな。


「雪の結晶が見える…! キラキラしてる…っ」

「寒い日に空気が澄み切っていると、見られる現象らしいですよ」

「そうなんだ…なんだか感動するね」


 椛の隣に並んで窓から身を乗り出す。
 輝く雪の結晶が舞い満ちる銀色の世界は、確かに美しいと言えるものだった。
 …その真ん中で金色の光沢ボディが光ってるからなぁ。
 ティムのはしゃぎ様を見ると、少し感動も減るけど。
 でも確かにその金色の光にも反射する結晶の世界は、美しかった。


「…ふふ」


 すると不意に、隣にいた椛が口元に手を当てて顔を綻ばせる。
 ティムを見て笑っているのかと思えば、その目は僕を捉えていた。

 …なんだろう?

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