第6章 Merry christmasの前にⅠ【アレン】
「それより先に言うことがあるから」
「?」
お互いにベッドの上で布団に包まれて、向き合って座り込んだまま。あまりに椛が真面目な顔で言ってくるから、大人しく従うことにした。
恐る恐る口から外される椛の手。
それから、こほんと少しわざとらしい咳払い。
なんだろう、身構えるようなことなのかな?
少し緊張が走る。
クリスマスより先って……もしかして、急に仕事が入ったとか?
少し残念だけど、それくらいならまぁ受け入れられる。
僕だって昨日は任務で椛とイブを過ごせなかったし。
でももしこれが別れ話なんかだったら──…いや、ないない。
ないから。それはない。絶対ない。
というか僕がよくない!
そんなことクリスマスの朝に言われたりなんかしたら──
「Happy birthday、アレンくん」
………へ?
「生まれてきてくれてありがとう。私と出会ってくれてありがとう。…私を好きになってくれて、ありがとう」
「……」
思いっきり悪い報告だとばかり思ってたから、内心冷や汗が止まらなかった。
だから、思いっきり反応に遅れてしまったんだと思う。
…ハッピーバースディ…って……おめでとう?
ありがとうって……僕に?
「私にとってはイエス様より大切なの。アレンくんが生まれてきてくれたこと」
目の前の椛の顔が、少し恥じらいながらぽそりぽそりと言葉を紡ぐ。
最後には誤魔化すようにへらっと大きく笑って。
…ああ、照れてるんだ。
照れながらも、真っ直ぐ伝えてきてくれている椛の真っ直ぐな言葉。
………嬉しくないはずがない。