• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第6章 Merry christmasの前にⅠ【アレン】



「…ふあ……椛…?」


 ぱちりぱちりと瞬いて、まだ眠たげに欠伸を漏らす。
 眠っていた時の彫刻のようだった整った顔に、人の感情が吹き込まれる。
 まるで人形が人間に変わるかのように。

 いつもより早い起床だもんね。
 そこは申し訳ないなぁと思いつつ、笑いかけた。


「おはよう、アレンくん」


 真っ白な頭に赤黒い左手、額の星形ペンタクル。
 特殊な外見を持つ彼の名を呼べば、ふにゃりと柔らかく笑う。
 ああ、まだ寝惚けてる時の無防備な顔だ。
 いつもの優しい紳士的な微笑みも好きだけど。
 感情の垣間見える彼の笑顔は、凄く好き。


「ん…おはよ」


 まだ眠たげな瞼を擦り、笑いかけてくる。
 朝一番にそんな彼の顔を見て、言葉を交わして、微笑み合う。
 なんて幸せなんだろうって、幸福を感じる大事な一瞬。

 その時、カラカラと小さな音がして窓が開く気配がした。
 同時に冷たい空気が一気に入り込んでくる。


「っ!? 寒…っ!」

「ティムっ? 窓まで開けてなんて言ってな──」


 冷たい冬の朝の空気に、思わず二人で跳ね起きてぶるりと身を寄せ合う。
 見れば、やっぱり。窓を開けた犯人は、聞き分けの良いはずの金色のゴーレムだった。
 なんで窓まで開けたのか。それはティムを見てすぐにわかった。


「あれ…雪?」

「ほんとだ」


 ゆっくりと昇っていく朝日。
 薄暗い朝が段々と明るく染まっていく。
 暗かった世界が、真っ白な世界へと塗り換わっていく。
 そんな世界の中を、ぱたぱたと楽しそうに飛び回るティム。
 金色の丸いボディにちらほらと落ちていくのは、小さな雪の結晶。

/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp