第2章 ◇恋の始まり(ラビ)
「なんだかんだ、大事にしてくれてたんさ?」
「…っそれは…」
下から覗き込むように、身を屈めてその俯く顔を見上げる。
見えたのは、自分の顔で影を作った南の顔。
「…折角くれた物だし…付けられないからって、ずっとしまっておくのは…勿体無い、でしょ」
影を作ってもわかる、どこかほんのりと赤い顔。
「…そういう物貰ったの、初めてだったし……ラビの気遣いは、嬉しかったから」
ほんのりと顔を赤らめて嬉しいという。
そんな南の顔に、ドクリと胸が鳴った。
「大事にしたいなって、思ったの」
ドクドクと胸が鳴って、そんな南から目が逸らせない。
──あ、やべぇ。
これマジで。
「……物は大事にするタイプなんです」
どこか苦し紛れに、顔を上げて恥ずかしそうに口にする。
そんな南の姿に、どうしようもなく胸はざわついて。
どうしようもなく顔は熱くなって。
どうしようもなく、嬉しいと感じてしまった。
「………マジで」
「私は真面目だけど」
や、そっちじゃなくて。
「……ウン、そーか」
「ラビ?」
「オレ、用事思い出したから。もう行くさ」
「あ、うん」
本を手に席を立つ。
自然に見えるように笑顔を一瞬だけ浮かべて、すぐに南から顔を逸らした。
こういう時でも上手く立ち振る舞えるオレって凄い。
…いや、違うな。
「じゃな。仕事も程々にしろよ」
「うん。ありがとう」
多分、わかってたから。
今はっきりと明確になってしまっただけで、きっとこの想いは前々からオレの中にあったもの。
だから気付けば目で追って、気付けばいつも捜していた。
オレ自身が気付いてなくても、オレの心は勝手に南を欲してたんだ。