第5章 旧い夢 【悪い夢 side S】
入り口に立ち、俺たちに頭を下げる智くん。
戻って来てくれた!
体が自然に動く。
そして…抱きしめていた。
「おかえり」
その一言しか出なかった。
抱きしめる腕に気持ちを籠める。
すぐに同じように智くんを待ってた
メンバーに引きはがされた。
相葉くんの一言で
一気に部屋の空気が変わる。
この辺、相葉くんって天才的だと思う。
これで…全てが元通りになると思ってた。
つくづく甘かったと思う。
智くんの心の傷を、抱えたものを
少しもわかっていなかった。
支えると決めていたのに…俺は。
しばらくは穏やかな日々が続いた。
智くんはすっかり元気になったように
見えた。
仕事も徐々に今まで通りにこなす姿に
安心しきってた。
でも…本当はなにも終わってなかった。
収録後に倒れた智くん。
病院のベッドでうなされ
手を伸ばす智くんの手を握る。
今度こそ、この手を離さない…
離したくないと思った。
先生の話を聞きながら頭をフル回転させる。
どうしたらこの手を離さずに済むか?
どうしたら智くんを守れるか?
医:「…ただ一人で暮らされるの
経験上いいとは言えません。
一度ご家族などで話し合って
どなたかと一緒に生活して、
服用量のコントロールと
減薬をしていきましょう」
この言葉を聞いて俺は決めた。
智くんと一緒に住めばいい。
そしたら…。
そしたら…。