第5章 旧い夢 【悪い夢 side S】
点滴の異常音のせいか?
それとも俺たちの声のせいか?
駆けつけた病院のスタッフに追い出された
俺たち。
それから何度も見舞いに行ったけど…
智くんは別人のような反応しか示さない。
本当はみんなずっと傍にいたかった。
でも智くんの帰ってくる場所を守るために
決死の覚悟で仕事をこなしていた。
しばらくしてマネージャーから
智くんの退院を聞いた。
いてもたってもいられなくて、
必要そうなものを買って
智くんのマンションに向かった。
出てくれないかも…。
不安になりながらオートロックの
部屋番号を押す。
インターフォン越しに久しぶりに
智くんの声を聞いた。
通された部屋は凄く冷えてた。
冷えきった部屋に
一人たたずんでいた智くん。
冷たい部屋の空気と音のしない空間。
まるで智くんの心の中を
表してるみたいだった。