第20章 Sweeter than SWEETS
渋谷から六本木なんて距離にしたらたかが知れてる。
でも、渋滞が酷いから意外に時間はかかる。
車内で何かを話すわけじゃないチーフと利きはじめた暖房と車の揺れに前日、寝てなかった俺の瞼はゆっくりと視界を閉ざしていった。
「おはよー、相葉。
眠いだろうけど着いたよ、六本木」
肩を揺すられてゆっくり目を開けるとコンクリートの壁に囲まれた駐車場の風景が目に飛び込んでくる。
「あっ、……着いた…の?」
ひとつ伸びをして眠気を払う。
そうだ、仕事だ…。
「とりあえず、楽屋、行こうか?」
チーフにそう言われてタレントクロークに向かう。
鍵を受け取ってそのまま楽屋に入ると『ここで待ってて』ってチーフが言うから今日の台本に目を通して待つことにした。
しばらくして、チーフが紙袋を片手に部屋に入ってきた。
「昼飯、まだだろ?これ、今でも好き?」
そう言って差し出したのはJrのころよく食べてたお弁当だった。
「これって…」
「そう、あそこの唐揚げ弁当。
なんか懐かしくない?
最近出ないでしょ?ここの」
確かに…。
いつからか出なくなったよなぁ、この店の唐揚げ弁当。
嵐が売れるようになって、それに比例するように弁当のレベルも上がっていった。
ほんの些細なことで自分たちの周りの空気を知らされるのがこの業界の特殊さなのかもしれない。