第20章 Sweeter than SWEETS
「じゃ、先方に承諾の返事をするわね?
あっ、あと…」
副社長は真っ赤な口紅が塗られた唇を小さく舐めて一息つくと続けた。
「やっぱりあの子達になら話してもいいわよ?
ずっと黙ってるの、辛いでしょ?
櫻井の時の轍は踏みたくないから…。
まぁ、判断は貴方に任せるけどね?」
副社長は言いたいことだけ言うと、でかいデスクに置かれた書類に目線を落とす。
つまり、終わりってことね?
俺は一礼して、チーフと共に部屋を出た。
「午後からは六本木だっけ?」
チーフマネージャーが廊下を歩きながら聞いてくる。
今日は午後からレギュラー番組のナレーション録りでテレ朝に行くから、そうだと答えると珍しく局に行くと言われた。
「えっ?一緒に?」
「ああ、ちょっと話もしたいし。
今日は車できたんだよね?
事務所の車で行くか、相葉の車にさ、乗せてよ?」
チーフとはチーフがチーフになる前からの付き合いでそれこそJrの頃から知ってるしなんとなく兄貴分みたいな感覚だったりする。
それをチーフもわかってるからたまにこんな砕けた口調で話してくる。
俺にそれを断る理由はないから頷いた。
地下の駐車場に着くとすっとチーフの掌が目の前に差し出された。
「鍵、頂戴?いいの乗ってるじゃん?
俺、コレ乗ってみたかったんだよねえ。
六本木まで試乗させてよ?
大丈夫、事故んないからさ。
昨日、寝てないんでしょ?」
ははは…バレてるし…。
チーフの心遣いに感謝して素直にキーを差し出した。