第5章 旧い夢 【悪い夢 side S】
まずは落ち着かせないと…。
普段、テレビではぼーっとしてる印象の
智くんだけど実はすごく責任感が強く、
我慢強い。
見てないようで回りをよく見てるし、
勘もするどいほう。
そこから相手の気持ちを忖度して
相手のために自然に動く。
そして色々なことを胸に抑え込み、
何も感じてないように自然に振る舞う。
実はものすごく繊細なのに…。
その繊細さから目をそらすように
無理をする。
そして…たまに爆発させてしまう。
爆発させると言っても
周りを傷つけることは決してしない。
その感情が全て自分に向いてしまう。
そんな智くんの姿を平気で見ていられる
俺たちじゃないのに…。
いつもと様子が違う智くんをみて、
嫌な記憶がよみがえる。
「智くん?もしかして夢をみたの?」
俺の問いかけに
智くんの頭がかすかに動いた。
あぁ…やっぱりかぁ…。
洩れそうになるため息を無理矢理
抑え込んで智くんを抱く腕に力を込める。
「智くん、大丈夫だよ。
俺がいるでしょ?」
言いながら俺はあの出来事を
思い出していた。