第19章 DESPERATE
二宮side
そっと舌先で、
口の中の智の舌を撫でる。
ゆっくりと舌を動かし、
わずかに空いた空間を蹂躙する。
小さな吐息が聞こえた気がして
そっと唇を離した。
智の唇と自分のそれを繋ぐ銀の糸。
ゆっくりと無くなる糸を見ていると
智の瞼が少し震えた気がした。
「智…」
役のために長く伸ばしている
髪をかきあげる。
小さな声が聞こえて…
智の瞼がゆっくりと上がる。
「智?気がついた?
どっか辛いとこ、ない?」
矢継ぎ早に聞く俺に
ぽかんとした顔で見つめる智。
O:「…ニ…ノ……?
ここ…。
……え?…なんで……?」
驚いているのか、
状況を把握できてない様子の智。
とりあえず、智の枕元にある
ナースコールを手に取り
そのまま押した。
ナ:「どうされましたか?」
スピーカーから聞こえる声に
智が目をさましたことを告げる。
わかりましたという声が聞こえて、
少しして医師と看護師が入ってきた。
医:「大野さん?わかりますか?
ここは病院です。
夕方、船から落ちて
ここに運ばれたんです」
O:「え?あっ…おいら…」
思い出すように視線を揺らす智。
そのまま、いくつか質問しながら
診察していく先生。
徐々に智の受け答えもまともになり
その様子をみた先生はひとつ頷く。
医:「明日の朝、もう一度診察して
問題ないなければ退院で
大丈夫だと思います」
そう言い残して部屋を出ていった。