第18章 Will never let you go…
大野side
目の前の大きなキャンバスに
絵筆を踊らせる。
描けなくなっていたのが嘘みたいに
なんの迷いもためらいもなく
筆を走らせる事が出来るようになった。
あんなに巨大で
プレッシャーに感じていた
キャンバスの白が今は愛おしく感じる。
白いキャンバスに
白い絵の具をつけた筆。
今までだったらやらなかった。
でも…光を弾く白が持つ存在感…。
見えるものがすべてではないんだって
言ってるみたいで…。
すごく惹き付けられた。
巨大なキャンバスに人の顔を描く。
自分のようで自分ではない人物。
キャンパスの左半分には色を載せた
絵筆を走らせる。
青・赤・緑・黄色・紫…そして白。
頭の中に浮かべたその人たちの顔。
そして鏡に映る自分。
直接伝えるのではなく
僕の気持ちをこの絵の中に託す。
パッと見、僕の横顔のような絵。
そこに僕はみんなの顔の特徴を
少しずつ溶け込ませる。
今の僕を形づくるのは
みんなの優しさ…、
みんなの気持ち…、
みんなの愛…。
その大事な人たちを
自分の愚かな行動で傷付けた…。
あの時、僕はどんな顔を
してたのだろうか?
きっと惨めな顔をしてたと思う。
そして、その顔で
更にみんなを傷付けたんだ…。
鏡に映る自らの顔を凝視する。
それは心の底を見るようで
少し辛いけど…
それをしなくてはならないことを
したのは自分だから…。
筆を置き、深呼吸した。