第18章 Will never let you go…
櫻井side
まさか智くんの口から
「抱いてほしい」なんて言葉が
出てくるとは思いもしなかった。
智くんは…、
あんな酷い目にあったからかもしれないけど
未だに性に対して消極的で
自分から求めることはほとんどしない。
自分の中で越えちゃいけないと
頑に守り続けてる部分があり、
躰を重ねてる時でさえも
その一点を守ろうとする。
そんな智くんを覆う殻を破りたいと…
常に思ってた。
全てから解放してあげたい。
快感を得ることは罪じゃない。
好きな人と肌を重ねることに
羞じらいなんて必要ないと。
全てをさらけ出しても問題ないということを
常々、知ってほしいと思ってた。
そんな智くんから放たれた一言の重さ。
その一言に籠めた智くんの覚悟…。
それをきちんと受け止めたいと思った。
智くんの踏み出す1歩を
最上のものにしたい。
最上が無理でも辛くも苦しくもなく
ただただしあわせな時間にしたい。
智くんを抱き締め、癒す3人に任せるように
リビングを出た。
少しでもいい状態で抱きたいと思った。
自分の快楽なんてどうでもよくて
ただあの人を癒したいと…
甘く溶かしてあげたいと思った。
傷つけずに済むように必要なものを
一つ一つ用意する。
神聖な儀式の為の準備をしているような
気分だった。
しばらくしてそこにニノが加わる。
「どうして?」
智くんのそばを離れたのかと聞いたけど
なにも言わずに微笑むだけだった。