第18章 Will never let you go…
櫻井side
抱きしめていた智くんの様子がおかしいのに
気がついた。
「智くん?ねぇ、智くん!
どうしたの?苦しいの?」
胸に手をあて、もう片方の手で
俺のジャケットを掴んでる。
O:「ゃだ…ぁい………し…じゃぅ」
微かに聞こえた呟き。
その様子に思い当たったのが
パニック障害の発作。
脱力する体を抱き上げる。
ソファーで向き合う形で膝にのせ
ひたすら背中をさすりながら
「大丈夫だよ」と伝え続ける。
智くんの様子に、
この人はどれだけの緊張感の中にいたのか
と思うと居たたまれなくなる。
背中をさすりながら体温を伝えていく。
「智くん、大丈夫だから。
傍に居るよ。
パニック発作だから。
これじゃ死なないから。
ゆっくり息を吸って、吐いて。
そうそう…上手だよ」
背中を摩りながらゆっくりと呼吸を促す。
汗で額に張り付く前髪をそっと搔き上げる。
O:「しょ…ちゃ……いる?」
「いるよ。ここにいる。
大丈夫、帰って来たんだよ?
もうなにも心配しなくていいよ?」
乱れていた呼吸が徐々に戻ってくる。
顔色はまだ良くないけど、
少しずつ落ち着いてきたのが判った。
「智くん、疲れちゃったでしょ?
少し眠る?」
今にも瞼が落ちそうな感じだったから
聞いてみたけど、
智くんは眠るのを拒否するように
何度も首を振る。
O:「や…ねなぃ…こわぃ…ねる…の」
そんな様子を見たら
無理強いなんて出来なくて…。
「わかったよ?
じゃ、このまま横になってようね?」
智くんの頭を膝に置いたまま
完全に落ち着くのを待つことにした。