第18章 Will never let you go…
櫻井side
それは間違いなく智くんの靴で、その瞬間、
社長が約束を守ってくれたのを悟った。
逸る気持ちを抑えて、スマホを取り出す。
『智くん、帰って来た!』
それだけ送ると階段を昇る。
どこに居るんだろう?
4階のリビングか?
それとも5階の自分の部屋か?
とりあえずリビングを覗くことにした。
4階までダッシュする。
少しでもはやく会いたくて。
一刻も早くその存在を確かめたくて
階段を昇った。
4階のリビング。
夕暮れ時、小さくついた間接照明。
控えめに付いた明かりの中に…いた。
立ちすくむっていう感じの方が
似合いそうな不安そうな顔で
ソファーの前で立っていた。
「智くん…おかえり」
口から出たのはこの一言だけで…。
そのまま足早にソファーの前に駆け寄り
抱きしめた。
華奢な躰はますます小さくなっていた。
抱きしめた躰の薄さが
離れていた時間にこの人に与えたものを
感じさせた。
肩に顔を寄せた智くんが
小さな声で一言呟く。
O:「ただいま…翔くん」
その一言が聞きたかった。
その一言に思わず抱きしめる腕に
ぎゅっと力を籠める。
そんな俺に抵抗せず
身を任せてくれる智くん。
それ以上言葉は無かった。
なんにも言えなかった。
ただ抱きしめたこの人の匂いを体温を
感じる。
当たり前のことが
あたりまえじゃなくなってた日々。
ようやく戻って来たこの体温を
もう離さない…。
守りきると心に誓った。