第17章 Rolling Days
大野side
潤くんと一緒に部屋に戻った。
別に悪いことをしてるわけじゃないのに
誰かに会ったらどうしよう?って思って
無意識のうちにポケットに入れたガラス瓶を
ぎゅっと握り締めてた。
M:「ちょっと待ってて」
潤くんが一言言い置いて部屋を出た。
ポケットの小瓶を出して
目の前で振ってみる。
カラカラと小さな音を立てて
カラフルな小さい星が小さな瓶の中で踊る。
小さな小さな瓶の中…。
苦しいはずなのに…
出ることに躊躇いを感じる。
出てしまったら…一人だから…。
でも自らの意思とは関係なく、
出されてしまったら…
果たしておいらは…。
放たれた世界で生きていけるのかな?
…きっと…。
不安を消したくて小さな星に手を伸ばし
祈るような気持ちで、口にする。
口に広がる甘味は…
心のバリケードを脆くする。
M:「智さん?入るよ?」
部屋を出るとき、当たり前のように
この部屋のルームキーを持ってった潤くん。
おいらもそれを咎める気は毛頭無かった。
手に日本酒の瓶があった。
M:「もう少しいけるでしょ?」
「ふふ、うん。大丈夫。
駐車場で醒めたから」
M:「だよね?
だから貰ったやつ、持ってきた。
これね、前に飛行機で飲んだの。
こっちのお酒だったんだね?
5人じゃ足りなくなるから
二人で飲んじゃおう?」
悪戯っぽい笑顔を浮かべて
潤くんが黒い高そうな酒瓶を振る。
綺麗な筆で『伯楽星』と書かれたラベル。
口当たりのいい酒はするすると
入っていった。