第4章 悪い夢 side O
何度も何度も自分を消そうとしたけど…
そう簡単に消せなかった。
物理的に消せないなら…
心を消せばいい。
思考を停止させる。
なにも感じなくなる。
諦めと停止させた思考で感情を殺す。
なにも感じなくなったら
食べ物は口に入れられるようになった。
ただ言われるまま受け入れるだけで
そこになんの意味も感じてなかった。
それが自傷行為をやめたと見なされたらしく
ようやく退院の許可が下りた。
事務所の車でマンションに向かう。
久し振りの太陽の光に射ぬかれる。
自分の中で止めていた
思考と感情が刺激される。
真っ白な部屋で止めた思考と感情。
動かせば辛くなるのがわかったから…。
だから止めた。
常にカーテンを閉め
静謐の中に感情を沈めた。
自分が壊れているのは自覚していた。
久しぶりのマンション。
病院よりは落ち着く。
部屋の匂いや空気が
否応なしに感情を刺激する。
停止させていた思考が動き出す…。
動き出す思考を止めたくて
ソファーの上でじーっとしていた。
どれぐらい時間が過ぎたのかも
わからなかった。
音のしない部屋。
その静寂を破るように
…インターフォンが鳴った。
S:「智くん、今大丈夫?」
モニター越しに心配そうな顔の
翔ちゃんがいた。