第16章 Don't be discouraged!
松本side
一頻り笑ったあと和が真剣な顔で言った。
N:「潤くん、薬、出して。全部…」
和のほうが辛そう声で…
顔にごめんって書いてある。
和が謝る必要なんて欠片もないのに…。
辛い思いをさせてるのは…俺なんだよな。
N:「あのさ、薬渡すの辛いと思うんだ。
でもさ、気持ちが落ち着かないときは
冷静な判断が難しくなるじゃん?
俺、もしもが怖いんだよ。
あの時の絶望感を2度と
味わいたくないし味あわせたくない。
それにさ、もしも潤に、
それが例え事故でも
薬のせいでなにかあったら…
あの人、自分のこと、絶対責めるから。
だから、俺のためにも、智のためにも
持ってるの、全部出して」
「ちょっと、待ってて…」
そう言うしかなかった。
こんな顔、見たくない。
薬を渡したら、
この不安とどう向き合えばいいのか?
それでも、これ以上辛そうな和を見るほうが
キツかった。
俺のせいで智さんを悲しませるのも辛い。
薬を飲んで眠れるようになったときは
もう、それだけで良かった。
仕事にも影響させずにすむ。
これで、すべて上手くいくとさえ思った。
でも…違ってた。
逆に心配させて…辛い顔させて。
一つ間違ったら…なんて考えもしなかった。
「これで全部だから」
紙袋に入ったままの薬のシートと
部屋に隠してた分を和の前に置いた。