第16章 Don't be discouraged!
松本side
「いらっしゃい」
時間も時間だから小声で言う。
N:「おじゃしまーす」
和の声が部屋の中に籠る
鬱積した空気を破るように響く。
和が靴を脱いで部屋に上がるのをみてから
玄関にロックをかけた。
何度も来てるのにキョロキョロしてる
和に声をかけて、リビングに促す。
ごめんと謝る和。
謝るなよ…声に出さずに思う。
どのみち、
すぐには寝れないと思ってたから。
ビニールから酒やツマミを出す和に
キッチンから声をかける。
「ちょっと待ってて。
簡単なツマミつくるから」
N:「え?いいよ、そんなの。
そりゃ、潤くんの手料理は嬉しいけど
つかれてるでしょ?」
「簡単なものしか作んないし、
せっかく、和が来てくれたから…。
すぐ出来るから、
テレビでもオーディオでも
適当につけて待ってて」
N:「うん、じゃ、そうする」
「先飲んでてもいいよ?」
N:「やだよ、一人で飲んでるなんて。
潤くんと飲むために来たんだから…」
和がリビングの端に設置している
オーディオの方に歩いていくのを目の端で
捕らえながら、手早くおつまみを用意する。
そういえば誰かのために作るの
久しぶりな気がする。
家に戻らない日が続いてるし、
帰っても深夜でみんなとすれ違ってるから。
みんな、夕飯とかどうしてるんだろう?
いや、なんとかしてるよな?
だってみんな、やれば出来るんだから…。
俺がいなくても…。