第16章 Don't be discouraged!
二宮side
指定された上層階のフロア。
なん部屋かあるスイートのうちの一つが
割り当てられた俺たち。
扉は内側からかけない限り、
このフロアに関しては
各部屋のロックが解除されている。
フロア自体に施錠されてて
カードキーがないと入れないから
一般の人が入ってくることはない。
マネージャーをはじめとする
スタッフの利便性を考慮した結果だった。
廊下の一部をケータリングコーナーにして
いるので廊下にいい香りが漂っている。
とりあえず部屋に入ったものの
やはりJはまだ来てなかった。
リハは昨日のうちに済んでる。
なので当日の入り時間は
本来そんなに早くない。
だからJがまだなのは、
少しもおかしくない。
部屋に入ると大野さんは一目散にテレビの
前を陣取り、チャンネルを合わせる。
O:「あっもう始まってる!
翔くんがんばれ!」
少なくとも翔さんが映ってる間は
声をかけても無駄だろうな。
大野さんの背中を見てそう思う。
個展の準備で忙しかったから
きっと翔さん不足だ。
もちろん、そんなことおくびにも出さず
いつも通り、飄々としてる風に
見えるけど…。
俺たちの関係も
いつもと少しも変わらないけど…。
俺が選択する人がいるように…
この人が本当の最後の最後に選ぶのは
今、画面に映るあの人だと思う。
っていうか確信している。
でも、それで構わない。
そこも含めて、分かってての
俺達の関係だから…。