第15章 Always thinking about you…
松本side
はじまった番組。
一抹の不安を感じてたけど…。
責任感の強い翔さんが穴を開けるとは
思わなかったらいつもの定位置にいる翔さんに
ホッと小さく息を吐いた。
番組が進行し翔さんのコーナーが始まる。
いつものカメラワークで翔さんに寄った瞬間、
翔さんの疲れが見えた。
濃いめのメイクでパッと見、
誤魔化されてるけど…俺たちには分かる。
皆の顔がなぜか見たくて視線を移す。
ガタンっていう椅子の音と同時に
和の声が楽屋に響いた。
N:「J、止めて!!」
和の切羽詰まった声に身体が反射的に動く。
ドアに体当たりするような勢いで向かってくる
リーダーを抱き止める。
真っ青な顔で何度も何度も
「離して!行かせて」って言いながら
俺の腕の中で身をよじる大野さん。
あきらかにさっきまでの冷静さは失ってて…。
このまま離したらいけないって
頭のなかに警鐘が鳴る。
もがく身体を抑えながらいつものように
呼ぶけど…声が届かない?
「智!」
普段、楽屋では絶対に呼ばない呼び方が
口をつく。
その声に打たれたように、ようやく
動きを止めた身体。
腕の中に閉じ込めたまま、背中をさする。
少しでも落ち着くように…。
壊れそうなこの人を壊さないように…。
耳許で「大丈夫」と何度も囁く。
少しでも届くように…祈りをこめて…。
脱力した身体をソファーに座らせる。
無限に続くように思えた時間。
和の声がその時間を止めた。