第14章 Dear my doctor
櫻井side
コンコンコンと遠慮がちなノックの音が聞こえて…ゆっくりと智くんから離れる。
O:「はーい、どうぞ」
智くんがゆったりとした様子でノックに応える。
ドアが静かに開き、雅紀が顔を覗かせた。
A:「大ちゃん大丈夫?」
これまたのんびりとした様子の雅紀。
O:「雅紀?うん、大丈夫だよ」
ふわふわって笑う智くん。
雅紀が何かを言おうとしたけどそれより前に智くんの声が聞こえる。
O:「雅紀、翔ちゃんのこと、
連れて帰ってきてくれてありがとう。
雅紀はスゴイね、雅紀のおかげだね?」
A:「そんなことないよ、俺、なにもしてないよ」
照れくさそうに笑う雅紀。
O:「なにもしてなくないよ。
翔ちゃん、もう、大丈夫でしょ?
雅紀が行ってくれて…よかった」
「うん、雅紀のおかげだと思う。
俺一人じゃ…」
A:「そんなこと…」
思わず視線が合って、次の瞬間…二人して逸らした。
そんな俺たちをいつもの笑顔で見てる智くん。
A:「大ちゃん?熱は?顔、まだ、赤いよ?」
そういって智くんの額に手を伸ばす雅紀。
A:「上がってきたんじゃない?和たちに聞いたよりも高い気がするよ」
そのままベッドサイドに置いてあった体温計を智くんに差し入れた。
ピピッと音がなり検温の終了を知らせる。
A:「8度1分。全然大丈夫じゃないじゃん!
翔ちゃん、氷枕、下から持ってきて、あとポカリも」
てきぱきと指示する雅紀。
O:「雅紀、本物のお医者さんみたい…」
熱で潤んだ瞳で智くんが言う。
「取ってくるから智くんは寝てて」
そう言って階下におりた。