第14章 Dear my doctor
櫻井side
今度は俺が抱き締める。
俺の腕のなかにすっぽり入る体。
熱い体に涙が出そうになる。
「智くん、ゴメンなんて言わないで…。
俺の方こそ…ごめん。
心配かけたよね?ごめん。
雅紀にも和にも潤にも、もっと頼れ、もっと甘えろって…言われた。
あの時さ、智くんの顔見たら、俺、
どうしようもないぐらい頼っちゃいそうで
怖くて…
智くんのこと、雅紀から聞いたよ。
ごめんね、辛い思いさせて。
この熱も…そのせい……だよね?」
違うとでも言うように胸に顔をうずめたまま首をふる智くん。
柔らかい髪の毛に指を入れ、その感触を味わうように撫でる。
「智くん、俺ね…悔しかったの
みんなの今までの努力を否定されみたいで…
それなのに俺だけ残ることに納得出来なくて…
子どもみたいに拗ねたんだわ。
で、逃げた。
その結果、余計にみんなに心配かけた。
もうさ、こんなことやらないから。
ちゃんとするから…。
ごめんね…」
智くんの手が背中を撫でる。
大丈夫だよって言葉じゃなくて気持ちが…背中を上下する手から伝わる。
なんかその手が心地よくて…そのまま暫く動かずにいた。