第14章 Dear my doctor
櫻井side
階段を昇り、智くんの部屋の前に立つ。
逢いたい気持ちと不安が綯い交ぜになりドアの前に立ち尽くす。
下から小さく聞こえる3人の笑い声。
俺が立ってるところだけ別空間のように静寂を保ってる。
意を決して智くんの部屋の扉をノックした。
中から微かに声が聞こえた。
「智くん、入るね?」
O:「翔ちゃん…おかえり」
柔らかく笑う智くん。
オレンジ色の光が消え、紫から紺へと変わる光。
そのまま紺色に溶けてしまいそうで…ドア横のスイッチを入れる。
照明の下でみる智くんの顔色は明らかに悪かった。
何も言えずに立ったままの俺に優しく話しかける。
O:「どうしたの?
ふふ、そんな心配そうな顔しないで。
和たちが大袈裟なだけで、なんともないから」
ベッドから身を起こしこっちに来ようとする。
無意識に体が動いて…ベッドに押し留めた。
肩に置いた手に伝わる体温は普段よりも高い。
「熱、あるね?」
O:「大丈夫だよ?微熱だから…」
そんなわけ…ないでしょ?
O:「翔ちゃんこそ大丈夫?
月曜日の放送、無理してたでしょ?
顔色、悪かったもん」
そういって俺の方に腕を伸ばし、俺の体を座ったまま抱き締める。
O:「辛かったね。気付けなくてごめんね」
少し体を離して俺の顔を覗き込む。
O:「でも…もう大丈夫そうだね?
雅紀に元気もらった?
雅紀は存在自体がパワーの塊みたいだもんね?
よかった。雅紀に感謝だね」
そういってふにゃっと笑う。