第14章 Dear my doctor
櫻井side
運転席の雅紀が差し込む夕日に目を細める。
隣からいつもの声音で『緊張してるの?』って…。
自宅に帰るだけなのに緊張するっておかしいけど…。
緊張してるよ、正直。
『どうしたらいい?』って目で問いかけるけど…運転中の雅紀と目が合うことはなく、俺の問いかけは宙に浮いたまま。
もうすぐ家ってところで雅紀の声。
A:「翔ちゃん、ありのまま、思ってるままで
いいんじゃない?」
隣に目を向けると…雅紀がにっこりと笑う。
A:「大丈夫だよ?俺たち仲間じゃん?
ちゃんと受け止めるから…。
翔ちゃんの想いを翔ちゃんの言葉で
伝えれば大丈夫だよ」
智くんの大丈夫とは違う温度。
雅紀の大丈夫はなんだかパワーが湧く。
雅紀の大丈夫はミラクルが起きそうな気にさせてくれるから不思議だ。
「ありがとう、雅紀」
家に着き、車から出た雅紀が俺に手を伸ばしながら言う。
A:「おかえりなさい」
「ただいま」
4日ぶりに戻った家。
たった4日でなにが変わるわけじゃないのに…変わった気がするのは俺の思い過ごしなのかな?
玄関を開けようとドアに手をかけようとする。
絶妙のタイミングでドアが開いた。
おもわず一歩退いてしまった俺。
その横を雅紀が通り玄関に入っていく。
A:「ただいま~!和、お腹すいた~」
開けてくれたのは和なのね…。
まだたちつくす俺に雅紀の声がかかる。
A:「翔ちゃん?なにしてるの?早く入って!」
「あぁ…うん」
俺も玄関に入り、後ろ手で鍵をかけた…。