第14章 Dear my doctor
櫻井side
逃げるように部屋を出た雅紀を見て笑みが溢れる。
雅紀の後を追おうとして身体を動かした。
刹那、躰を駆けめぐる快楽の余韻。
自分の内から零れ落ちる感覚に動きが止まる。
全てを夢だと思うには余りにもリアルな感覚。
自分の行為や言動を思い出し赤面する。
でも…憑き物が落ちたというか…。
「これも雅紀のお陰…だよな」と独りごちる。
動かそうにも動かせない身体。
どうしよう考えてるとガチャっと小さな音を立てて扉が開く。
遠慮がちに入ってくる雅紀。
A:「翔ちゃん?起きてる?」
雅紀が寝てるとでも思ったのか小声で話し掛けてきた。
「あぁ、起きてるよ」
口調がいつもの雅紀だったから、俺もいつも通り返す。
A:「お風呂、沸いたよ?一緒に入ろう?」
「え?いいよ、風呂ぐらい一人で入れるっつうの」
A:「いや、確かに一人で入れるだろうけど…
俺、その…中で出しちゃったから…。
そのままじゃ、明日辛いし…
自分でやるの、きついでしょ?」
言われた内容を理解して顔に血が上る。
そうだ…俺。
A:「それに俺、最後の方かなり余裕なくって…
ごめん、動くの辛いでしょ?」
ものすごく申し訳なさそうな顔で言う雅紀。
さっきまでの強気な雅紀の陰はなく、いつもの優しい雅紀になってる。
どっちも愛おしいと思う俺。
「謝るなよ。あれは…あの…
お互いさま…だし…
あのさ…甘えていい?
俺、正直、動くのしんどいんだ」
雅紀はそれはそれは綺麗な笑顔をくれた。