第14章 Dear my doctor
櫻井side
あのまま話してたら弱い自分を更に見せることになりそうで怖かった。
雅紀は甘えろって言うけど正直甘え方なんて分からないし今更難しい。
俺にも俺のプライドもあるし…。
あれだけ泣いたあとだけど…それでも…。
だから一生懸命話す雅紀の言葉を受けとめた振りをして話を無理矢理終わらせた。
眠いって言って部屋に籠れば優しい雅紀のことだから放っておいてくれるだろうし…。
とにかく気持ち切り替えなくちゃ。
智くんのことも心配だし…。
和や潤にも謝りたいし…。
そんなことを考えながら勝手知ったるなんとやらで雅紀が客間として使っている部屋のドアを開ける。
きっちりと整頓された部屋はまるでモデルルームのよう。
俺のマンションとは違いすぎる。
思わず浮かぶ苦笑。
電気を付けて部屋に入り、ドアを閉めようとしたけど…。
視線を感じてドアの方に目をやると雅紀が立ってた。
「ん?雅紀?どうしたの?」
怒ったような顔をした雅紀がそのまま部屋に入り後ろ手にドアを閉めた。
パタンという軽い音を立てて閉まった扉。
カチャリと鍵が掛かる音がした。
無言のままの雅紀に再度声をかけた。
「雅紀?なに?どうした?」
そんな俺にようやく雅紀が口をひらく。
その口調はイラついた空気を含んでた。
A:「翔ちゃん、ほんとに分かってないんだね?
またそうやって無理矢理、自分だけで
決着、つけるんだ?
それで何でもない顔して大ちゃんたちに
会うの?
馬鹿にしてるの?
そんな誤魔化しに騙されると思ってるの?!」
答えられずに雅紀を見つめるだけしか出来なかった。